◆ 税務調査とは

 税の専門家として本来支払うべき税金以外に、請求されないよう【納税者としての権利】をお守りします。     

Ⅰ.税務調査の基礎知識

1.調査の種類

①強制調査

一般的に「マルサ」といわれる調査で、国税犯罪取締法に基づき臨検、捜索、差押えをする調査と、国税徴収法に基

づき滞納処分をする調査があります。

②任意調査

各税法に規定する質問検査権に基づいて行われる行政調査ですが、質問に対する不答弁・検査の拒否や妨害などにつ

いては罰則規定があり、間接的強制権といわれる調査です。

多くの会社が受ける通常の調査は、この任意調査です。

以下では、任意調査について説明します。

2.税務調査の傾向は

①税務調査の行われる時期

一般的に事業を開始してから3年後くらいに行われることが多いようです。法律に定められているわけではないた

め、会社の規模にもよりますが、その後3~5年に一度が目安です。

②税務調査の日数

会社の規模にもよりますが、一般的に2~3日で行われます。規模が小さく帳簿がしっかり作成されていて、明らか

に不正や誤りがないと税務署の担当者が判断した場合は、1日で終了する場合もあります。

③赤字会社に行われる調査

不況が続く昨今では、およそ7割の会社が赤字申告をしています。そこで、最近は赤字会社にも税務調査が行われて

います。赤字会社に対しては、消費税や源泉所得税、印紙税などが重点的に調査されます。

Ⅱ.税務調査の概要

1.準備調査

準備調査とは、調査官が実地調査を有効に行うために、重点調査事項の洗出しや調査方法や調査手順の検討を行うこ

とです。

各種収集資料や申告書・決算書類・事業概況説明書などをもとにして事業の概況調査と財務分析が行われます。この

準備調査で、前期や同業他社の数値を比較して異常な部分があれば、実地調査で重点的に調査されます。

2.実地調査

実地調査とは、税務調査官が会社等に出向いて行う調査です。この調査は次の3つに分けられます。

①帳簿調査

帳簿書類の検証、証憑書類の信憑性の検証、会計処理の正確性の検証等。

②現況調査

各種記録や記帳などのルールの調査等。

③反面調査

帳簿・現況調査だけでは疑問点が明らかにならなかった場合に、会社の取引先や取引金融機関などに直接出向いて行

われる調査。

Ⅲ.税務調査の論点

1.不正計算

不正計算とは、納税を回避するための意図的な計算方法をいいます。

例・・・売上や雑収入の除外、架空人件費などの架空費用の計上等があげられます。不正計算が発覚すると当然に重

加算税の対象とされます。このようなことをしないことが最善の調査対策です。

2.収益や費用の期間帰属のずれ

当期に計上すべき収益を次期以降に繰り延べたり、次期以降の費用を当期に計上したりすると、「期ずれ」として否

認されます。

例・・・売上の繰り延べ、仕入の繰り上げ、在庫の計上もれ、前払費用の計上もれなどがあげられます。

決算の際に、期末前後の収入や支出にかかる損益の帰属が、納品状況や契約内容と照らし合わせて、正しく処理がさ

れているか特に留意する必要があります。

3.法令・通達の要件不備

法令や通達により損金処理が認めれられるための要件が規定されている項目について、要件を満たしていないと否認

されるケースがあります。

例・・・貸倒損失や交際費、役員給与、寄付金、資本的支出の認定や特別償却・特別控除などがあります。

4.その他の論点

①消費税

納税義務の有無や簡易課税の業種区分、仕入税額控除の計算方法、原則課税の場合の仕入の帳簿の記載要件や領収書

等の整備などに注意が必要です。

②印紙税

会社が文書を作成した場合は、内容に応じて印紙の添付と消印が必要です。契約書などに印紙の添付もれがないか注

意してください。

③源泉所得税

源泉所得税の納付義務は支払者にあります。給与・賞与の支払時や事業者で源泉徴収の必要となる場合は納付もれが

ないか注意が必要です。

Ⅳ.節税と脱税の分岐点

納税者としては、国に支払う税金は少しでも少なくしたいものです。そのためさまざまな工夫が行われています。

しかし、安易な対策を行うと後々の税務調査で指摘され、加算税や延滞税により、かえって支払う税金が増えてしま

います。ひどいときは懲役や刑事罰を受けることにもなりかねません。

そこで、節税と脱税の分岐点をしっかり見極め、無駄な税金を支払わないようにしましょう。

1.節税

税法上の各種の特例措置を活用することにより、税負担を軽減または回避する行為を節税といいます。

これは適法な行為です。節税行為には、税額そのものが減少するものと、将来に課税を繰り延べるもの、また将来の

損失を先取りするものがあります。

①税額の減少をもたらすもの

・各種の税額控除の適用

・交際費と隣接科目の区分経理

・受取配当金の益金不算入制度の適用など

②将来に課税を繰り延べるもの

・貸倒引当金の繰入れ

・保険料などの短期前払費用の計上

・評価損の計上など

2.脱税

偽り・不正な行為により租税を免れる行為は、脱税行為にあたります。

これは違法な行為であり、罰金や懲役が科されることがあります。

①売上や棚卸資産の除外

②架空経費の計上など

3.租税回避行為

形式的には適法ですが、経済実質的には不合理といえるような取引により、租税を免れる行為を、租税回避行為とい

います。

租税回避行為は、法的には適法有効であるため、本来その行為の是非については文句をいえないはずです。しかし、

その行為が実質・実態の見地から不当に税負担を免れていると判断される場合は、その行為はなかったものとして課

税できる権限が税務署長には認められています。

4.節税と脱税の分岐点

税負担を軽減・回避する行為を行うにあたっては、まず、それが税法の規定に違反していないかに留意し、決して不

正な行為を行わないことです。さもないと、結果的に大きな損害を被ることがあります。したがって適法性と経済合

理性の有無が、節税対策を検討するうえでの留意点になります。